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「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」感想

filmarks投稿用のメモ。ネタバレあり

 

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190914@グランドシネマサンシャイン池袋のBESTIA(椅子がふかふかで音響も良かった)。同名TVアニメのOVAといった感じの位置付け。本編終了後の予告映像からもわかるように、TVシリーズから溢れたエピソードを次に公開される劇場版までの「繋ぎ」に使ったような感触だろうか。

本編は大きく2部に分かれている。前半はヴァイオレットが良家の跳ねっ返りお嬢様(どうやらワケあり)・イザベラの家庭教師となり、"友達"になる話。後半はイザベラと生き別れた妹・テイラーが自分を想ってくれる姉の存在を知り、郵便配達人(見習い?)となって"想いを届け"る話。

最後のクレジットを見てシリ構の吉田玲子氏ではなく鈴木貴昭氏と浦畑達彦氏の連名であったことに強い憤りを覚えるくらいには、何が言いたいのかわからない、はっきり言って取り留めが無くメッセージ性が感じられない映画だったな、と感じた。*1

本作はどんな話で何が言いたかったのか、少なくとも僕には答えられない。泣き所というと趣味が悪いが、あえてこの話のミソを言うなら、厳しい現実に引き裂かれてなお互いを想い合う姉妹愛と、想いを届ける郵便という営み、みたいなところに帰着するのだろう。が、それにしては個々のエピソードや会話に一貫性が無いなと感じてしまった。

わかりやすい暗喩、モチーフが無かったのも本作の理解を難しくしている。私が気づいたところでは、運命に縛られひとときの自由しか得られないエイミーと空を自由に飛び回る白い鳥、想いを届けるために少しずつ成長するテイラーと建設中の電波塔、花言葉*2。少し弱いかなあ。

音響*3や映像*4はめちゃくちゃ気持ちよかった。

 

そういえば、TVシリーズには無かった試みを感じるな、と思った。

・本作では手紙の送り手だけでなく受け取り手にもフォーカスしていて、一往復の手紙のやり取り双方にヴァイオレットが関わっている点

・手紙を届ける配達という行為にもフォーカスしている点

である。この差異に注目したら結構楽しめたので、やはりTVシリーズを見てから見に行ったほうがいいです。放送されてるアニメは全部見ましょう。

 

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以下続き。

 

TVシリーズでは30分1話完結の構成からか、手紙の送り手の想いを中心に話を作ることが多く、受け取り手が何を感じ取ったのかはその返信や送り手のエピローグから推察するほかなかった。が、本作ではイザベラもといエイミーと生き別れの妹テイラーがお互いに手紙を送り合う。そのどちらにもヴァイオレットが関わるので、受取手が何を感じ取り、どういう想いで返信するのかがわかる。これはTVシリーズに無かった要素だと思う。

しかも姉妹の間には情報の不均衡が横たわっていて、年端もいかないうちにエイミーと出会い別れたテイラーは、エイミーを朧げにしか覚えていない。自分のことは覚えていないかもしれない、多分一生会うことはないだろう、でも天涯孤独のあなたを常に想い続けている人間がこの世にはいる、的な想いが込められた短い手紙を読んで(代読だが)、物心もついていないテイラーが自然と涙を流すシーン。自分も世界のどこかであの日々を覚えていて、本当のあなたを想っているよ、的な想いが込められた返信を読んだエイミーの姿を見て、テイラーが自分を愛してくれた存在を思い出すシーン。これはTVシリーズには無かった、受取手にフォーカスした本作のミソだ。

手紙配達という行為も見所だ。表向きは配達を「つまらない仕事」と評していたベネディクトが、「届かなくていい想いは無い」みたいなことを言って必死にエイミーの所在を探し、なおも運命的な姉妹の別離を見て、距離だけでなく運命や境遇も超えて想いを届けることが出来る手紙配達という行為の意味を改めて感じたのか、ラストシーンでは自信を持って「想いを届ける」仕事だと言っていた。この変化を見ると、やはり配達という行為も本作の重要な要素だったと言えると思う。

 

ちょっと自分の中で話が咀嚼しきれていなかったので長くなってしまったが、こんなとこだろう。

 

以下雑感。

TVシリーズでもヴァイオレット見てるだけで良いアニメだったねってなってたのを思い出した。顔の良い女アニメ最高。

悠木碧の良さ。無条件肯定。

寿美菜子の艶感。実質ことはゆ。

EDいつもの茅原実里だなあと思ってぼけーっと聴きながらスタッフロールを読んでたけど、曲名で本編反映してるじゃんと気づいてよくよく歌詞聞いてたらめっちゃダサく感じられて笑った。本編終了後にダメ押しで同じこと言うのは野暮だ。

エンドロールで死人の名前がざざーっと流れてきたときは流石に感じるところがあった。辛すぎる。

 

*1:鑑賞中はTVシリーズの残滓(公開恋文の話、天文台の話、橋の上でのルクリアとの再会)を感じるたびに懐かしさを感じていたのだけど、冷静にその話数全部鈴木氏と浦畑氏の脚本回だったじゃんとなりめちゃくちゃ萎えた。そのくらいには僕はTVシリーズの吉田玲子脚本回のエピの方が好きだったのだが……

*2:ラストシーンでテイラーが顔を出した窓に置かれていた花は「永遠の愛」だそう。エモい。パブサしたら一瞬で特定できて便利な世の中だなーってなった

*3:タイプ音を使ったBGMめっちゃお洒落じゃなかったですか?あれTVシリーズにありましたっけ

*4:あえてセリフで説明せず指先や足に喋らせる演出が好きなので、期待通りの映像で良かった