タト部記憶

チラシの裏

2020アニメ十撰・十選+α

今年もまあまあアニメを見た。研究に急拵えの就職活動にと大忙しではあったが、突然の感染症禍にアニメは大きく本数を減らし、結果的には重荷となるようなアニメは出なかった。むしろ曜日感覚や時間感覚が脱落しがちな在宅ワークの助けにアニメを使っていた面もあり、日頃アニメ減らせと喚いてるわりに減ったら減ったでめっちゃ悲しいということに気づいた1年でもあった。

完走本数は63+31+40+60=194本ほど?ついに200本を割ってしまった。秋クールの追い上げが猛烈だったことを考えると、この皺寄せは来年の猛烈な本数増加に現れる気がする。

そんなわけで,今年も母数は少ないながら、真っ当に面白かったアニメ十撰,好きだったアニメ十選を選出したいと思う。なお,年内に最終回が放送された30分枠TVアニメーションという縛りで選出している。

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2020年面白かったアニメ十撰

  • ネコぱら

美少女動物園では留まらず,笑いあり,感動ありとエロゲ原作とは思えない(巨大偏見)引き出しを見せてくれたエンターテイメント。キャラクターが可愛い,というのは常に正義で,画面を見ているだけで多幸感があるという点でも稀有な作品だった。とはいえ安易なサービスシーンには走らず,一貫して正統派なお話づくりに終始していたのも非常に好ましいポイント。雑破業イズムが徹底された脚本チームの中でも特に異彩を放つ土田霞という脚本家が見いだされたという点においても,非常に価値あるアニメだったと言いたい。

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天文・地学・地理と一見変わった趣味を探求する少女たちが,自分の手の届く範囲に一生懸命に向き合う中で自分の「好き」を深めていき,やがて将来の夢を見つける過程を描いたお話。単なる美少女部活モノの枠を明確に超えた作品で,もちろん可愛いんだけどそれ以上に眩しいという印象が強かった。自分の「好き」を追求する少女たちが科学は400年前から有閑階級の所有物だという現実に気づき絶望しながら就職活動を始める後日譚まで見届けたい,そんな捻くれた気分に見ているこっちがなってしまうくらい真っ直ぐなお話に,毎回潤いをもらうアニメでもあった。

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Prime Video

  • 映像研には手を出すな!

とにかく映像に圧倒されるアニメだった。2020年で最も映像作品として勝負していたTVアニメというか,もはや既存のTVアニメの地平を完全に逸脱していて,映像面でこのアニメの右に出る作品は今年無かったのではないかと思う。TVアニメにおいて,映像はそれ自体が作品の芸術性・エンタメ性を担保するものでありつつ,同時にお話の説得力を後押しする非常に重要な要素である。このアニメの映像は前者はもちろん後者の働きも強く体現していて,主人公たちが抵抗勢力を押し退けながら自分だけの世界を自作アニメーションの形で表現していくシナリオには,現実から妄想のアニメ世界にシームレスに没入していく映像表現や,劇中アニメの完成度は不可欠なものとなっていた。とにかく”アニメ”が見たい!という欲望を満たしてくれる,ぜひおすすめしたい作品だ。

FOD*1

  • 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…

なろう原作の新しい地平を垣間見たアニメ。とかくなろう原作は陰キャ中高生や限界労働社会人の現実逃避娯楽というか,対象層もニーズも透けて見える作品ばかりがアニメ化されてきた。話の面白さよりも書き手読み手のキツさが先に立ってしまう,そんな作品がここ3-4年ほどのトレンド。そんな中,キングレコードが満を持して引っ提げてきたのがいわゆる「悪役令嬢モノ」の本作。主人公が陰キャオタク中高生でもなく,限界労働エンジニアでもなく,乙女ゲー好きの平凡な女子学生という時点でもう見やすい。話の内容も,チート能力で見返してやるぜとか褒められまくるぜとかそういう歪みを抱えたものではなく,ただただハーレムを築いてハッピーエンドを目指すという至って前向きな筋になっていた。乙女ゲームの主人公は最終的に誰か一人を選ばなくてはならない,でも悪役令嬢なら全員を選んで幸せになることを堂々と選ぶことができる。これは完全に発想の逆転だし,新たな話型を見つけることができた作品だった。

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Prime Video

Netflix

まずキャラデの美麗さで驚く。このキャラデで,小学生編にはなかった美少女キャラの大量投入をやってくるんだからもうわかってるとしか言いようがない。大吾を密かに慕う佐倉睦子は正統派美少女に成長し,大吾とバッテリーを組んで(実質セックス)フェティシズム溢れる投球を2クールに渡って存分に見せてくれる。イキったボーイッシュ少女の相楽太鳳は頼れるクール美人の沢弥生に重感情を見せるし,藤井千里はSっ気を発揮しながら色々デカい姉の藤井千代を翻弄する。画面を見ているだけで楽しいアニメになったのは一番うれしいポイントだ。この魅力的なキャラクター群で中学生らしさ盛り盛りの話をやるのだから,もう毎回笑顔になること間違いない。完璧な路線転換の末に一期から回収しても十分にお釣りが来る名作と相成った納得の一本。

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Netflix

地方局の深夜ラジオという非常にニッチなテーマでありながら,軽妙なギャグと人間ドラマに舌を巻いた作品。この作品の雰囲気というか,面白さを出している不可欠の要素が,鼓田ミナレ役の杉山里穂さんの怪演だ。なんと例えたらいいだろう…『昭和元禄落語心中』の石田彰さんの演技だ。キャラクターとして語るだけで雰囲気を作り,場を賑やかにし,人命を救ったかと思えば,劇中劇も演出する。キャラクターを通してこれほど表現力を発揮した例は,今年他に無い気がする。もちろんそれ以外の要素も一級品によく出来ていて,間違いなく今年を代表する快作といえるアニメだった。

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Netflix

  • GREAT PRETENDER

ドラマ畑で話題作を連発してきたヒットメーカーたる古沢良太が仕掛けるアニメ版『コンフィデンスマン』。フジテレビもかなり力を入れているのか,画面・音響ともに非常に完成度が高かった。が,やはり特筆すべきはお話の面白さだ。とかく舞台畑の脚本家がアニメに進出してくるとメディアの違いなのかスベりがちな印象だが,忠実にドラマのテンポや場面を再現して作っているのか全く違和感がない抜群の面白さだった。30分尺を完全に無視した豪快な話数構成は奏功していて,一つのエピソードでキャラのバックグラウンドを描き,会話劇を展開し,アクションまで見せてしっとり終わる,という凡百の深夜アニメ一本分以上のボリュームがあった。やり手の脚本家はどんな媒体でも面白い本書くんだなあ,という気づきをくれた作品にもなった。

Netflix

  • 放課後ていぼう日誌

美少女ニッチ部活モノにとどまらず,釣りという題材に対して真摯に向き合っていたのが好印象。釣り入門的な内容から料理,マナーと全てを網羅したもはや教育的作品とまで言えるものになっていた。そんないたって真面目な内容をしっかり萌えアニメに仕上げていたのは魅力的なキャラクターあってこそ。表情をころころ変える鶴木陽渚が初めての釣りにどんどんのめり込んでいく姿は視聴の大きな原動力になった。

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Prime Video

Netflix

過去2作から見事なコンセプト転換を果たし別物となった,メガヒットシリーズ『ラブライブ!』の最新作。過去2作で花田十輝が作り上げてきた「キワモノ揃いのグループで奇跡を起こして頂点を目指す」コンセプトを全て否定する非常にチャレンジングなお話づくりで思わず視聴意欲を掻き立てられてしまう。単なるキワモノではない個性豊かな少女たちが,グループを背負って一人ひとりでステージに立ち,個々の問題を丁寧に解決する展開を積み重ねて,各々の目標を達成する。真っ正面から堂々と挑んでいくお話づくりには毎回思わず感嘆してしまう。ストーリーを務めるのはあの『8月のシンデレラナイン』シナリオチーム。今までにない真に面白いアイドルアニメがここにあった。

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続き物なので多くは語らないが,今までの面白かった2クールを超えてめちゃくちゃおもしろかった。FOD一ヶ月無料期間を行使するなら絶対このアニメです。

FOD

 

2020年好きだったアニメ十選

 

ショートアニメ五選

  • へやキャン
  • ぷそ煮コミ おかわり
  • ピーター・グリルと賢者の時間 
  • One Room
  • ぐらぶるっ!

 

劇場アニメ三選

 

番外:好きなキャラクター五選

  • ほわん(SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ)
  • リィン=メイ(プランダラ)
  • 薮内円(あひるの空
  • ヴィヴィアン(異常生物見聞録)
  • 大鳴門むに(D4DJ First Mix)

 

番外:スタッフ三選

  • 田中仁

『虹が咲スクールアイドル同好会』の完璧な脚本に対して。当方プリキュアに疎いため一昨年の『ゆるキャン△』時点ではチェックすらしていなかったのが恥ずかしいくらいだ。メインライターということで代表して名前を挙げているが、本来は「『八月のシンデレラナイン』シナリオチーム」としたいくらいに全話で脚本がキマっていた。全体の大筋も一貫したコンセプトの元に綺麗に構成されていて,文句のつきようがない。オリジナルに近いアニメーションでこれほど丁寧なストーリーテリングを見られるのはありがたく、今後のさらなる活躍が期待される。

体感半分以上のアニメに出演する八面六臂の活躍に対して。大御所男性声優の訃報が相次ぐ今日、あらゆる役どころがこの人に集中している感がある。でもどのキャラも不思議と飽きない最高の演技を提示してくる。物静かなダンディーキャラ、凄味を利かせたいかついキャラ、心底イカれた狂人キャラと引き出しの広さをこれまで以上に感じさせられた一年だった。疲労で声を壊されないように…と祈っている。

  • (未定)

*1:去年も思ったが,超面白いアニメに限ってFOD独占なの,強いな~と思いつつ……こういうところで新規視聴者を遠ざけてしまうのはもったいないなあと。