タト部記憶

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2019アニメ十撰・十選+α

今年もアニメを見た。終番をざっと数えたところTVアニメが199本,劇場アニメを合わせれば210本くらいだろうか。春夏クールがそもそも本数少なかったというのもあって大人しめではあるが,粒ぞろいの1年だった。

そんなわけで,今年も個人的面白かったアニメ十撰,好きだったアニメ十選を選出したいと思う。なお,基本的には30分枠TVアニメーションという縛りで選出している。

十撰は特に他人にオススメできるものだと自負しているので、未視聴のものがあれば是非。多くの人が登録していそうなサブスク配信サイトへのリンクも貼ってみた。

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2019年面白かったアニメ十撰

天才がピアノを極めるというだけでこれほど面白くなるのかという驚きがあった。映像そのものの出来は決して良かったとは言えないが,話の良さ・音の良さが補って余りある素晴らしい作品。犇めく天才・秀才を制して一ノ瀬海が願ったことが先生の手術だったの美しすぎて声出た。放送中は不思議なほど話題にならなかったが,一見の価値ある確かな名作だった。

Forest of Piano | Netflix

 

  • 風が強く吹いている

スポーツタイアップのアニメにしてはとてつもなく力が入ったアニメだった。IGの安心感ある映像は言うまでもないが,一人一人がチームのために襷を繋ぐという駅伝競技の性格を毎週放送のTVアニメという媒体に最大限落とし込んだストーリーが上手すぎた。走っているその瞬間は一人ぼっちの孤独な戦いであり,襷を貰った/繋ぐ仲間との戦いでもあるという二面性が効いてくる終盤の怒涛のモノローグの連続は今年屈指の満足感あるシーンだった。

風が強く吹いている | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 

 

スタンドを使った頭脳戦と異常者ばかりの多彩なキャラクターで全く飽きずに見られた。前作が町から出なかっただけに、イタリアの観光名所を駆け回る本作は「移動」すらもバトルの場にしていて独特の緊張感があった。ラスボスは微妙だったが、最終話の挿話のように、既に決定された運命の上(荒木飛呂彦の手の上)で全てのキャラがあれこれしていたのだと思うとそれすら趣深い。

ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

JoJo's Bizarre Adventure | Netflix

 

ハルオに自覚的な恋心がなく、あくまで対戦ゲームを通じた純粋な人間関係の構築に焦点を当てて少年時代を描いた一期と打って変わって、OVAからもう日高小春が感情モンスターで胸を掻き乱されるような感覚に久しぶりになった。二期では恋愛要素の比重がさらに大きくなり、少年時代から時間をかけてこじれた三角関係が対戦ゲームを通した対話によって整理されていく過程は切なすぎて胸が締め付けられた。一期からの丁寧な人間関係の描写があったからこそ二期の変化に深みが出るのであって、一寸の無駄もない完璧なアニメだった。

Hi Score Girl | Netflix

 

1クール目前半の少女漫画然とした陰湿展開からは想像できないほど少年漫画的熱さを秘めたアニメだった。まずキャラが良い。根は優しい元不良少年、愛する母親に拒絶され琴から離れた天才少女、箏曲部に陰湿な嫌がらせをしていたザ・少女漫画少女、音楽家の才を持て余す無気力そうな顧問、才能と努力の差を知り心を閉ざしたコーチ、とそれぞれ過去に痛みを抱えたキャラが話に深みを与える。個人の才能や努力・チームの和といった少年漫画要素が如実に演奏に現れる琴という題材もまた良く、一話必ず一つメッセージが込められる本作にぴったりマッチしていて気持ちが良い。ひさびさに2クール見て良かったと思った。

この音とまれ! | フジテレビ公式<FOD>【1ヶ月無料】*2

 

  • 彼方のアストラ

SF版十五少年漂流記かと思いきや,一見バラバラに見えた登場人物たちに隠されたつながりが見えてきて話が大きくなっていく高揚感はかなり上手い話作りだなと感心してしまった。キャラがとても良く仰角視聴要素も十分。1クールという尺も過不足なく,日常回があったかと思いきや感動,衝撃をバランス良く仕込んでおり,話の起伏や緩急というストーリーテリング的要素には全く非の打ち所が無かった。とても完成度の高いアニメーションだなという満足感が残る作品だった。

彼方のアストラ | アニメ動画見放題 | dアニメストア

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ASTRA LOST IN SPACE | Netflix

 

いきなりヴァイキングの殺すか殺されるかという過酷な世界に放り込まれた少年が,父の仇だけをモチベーションに戦士になっていくという典型っぽい話なのに,主要キャラのエピソードが全部良くてただ単に主人公だけに収まらないのが良い。戦士とは何か。首領とは,王とは何か。父とは何か。愛とは何か。死とは何か。神とは何か。たくさんの問いかけと,この作品なりの答えがあって,それを淡々としたアシェラッドの振る舞いと対照的に感情で動くトルフィンの振る舞いとですんなりと描き出す,粛々と2クール放送したはずなのに4クール以上の内容の重厚さを持ったアニメだった。中世のヴァイキングの生活や残酷な命のやり取りを描く映像も非常に迫力があり,総じて完成度が非常に高いアニメーションだった。

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  • Dr. STONE

質の低い「異世界転生」「なろう」アニメが跳梁跋扈した2019年にあって,科学オタクが文明を一から再興するというコンセプトは鮮烈に映った。それを少年漫画的な筋に乗せることが出来る作者の知性も凄まじく,抗菌薬を作るためにガラス器具から作る,といったような科学への真摯さが滲み出る姿勢には一人の大学院生として胸打たれてしまった。人類のために未来を信じて今を託す,という思いが時を超えて父子に受け継がれる回は珠玉。

Dr.STONE | アニメ動画見放題 | dアニメストア

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Dr. Stone | Netflix

 

  • Re:ステージ!ドリームデイズ

典型的な美少女アイドルアニメをなぞりつつ,途中のギャグ回や終盤の畳み掛けでしっかりと独自の面白さを出していったのが巧かった。この手の美少女だけで構成されたアニメは,ともするとどのキャラ・どの要素が軸になるのかを見失いがちになってしまうところ。だが,本作は主人公が一度夢を諦めた少女たちの今を解決し,部として結束していく過程で,主人公自身も憧れるだけだった姉に肩を並べるまでに成長する,という一貫した筋が気持ちよかった。原作(?)のつばす絵から一転して幼すぎにすら見えるキャラデザもまた絶妙に可愛い。彼女たちが夢を追いかける日々をもっと見ていたいと心から思える作品だった。

Re:ステージ! ドリームデイズ♪ | アニメ動画見放題 | dアニメストア

 

  • 可愛ければ変態でも好きになってくれますか?

2019年にあって唯一の,ハーレムラノベクソアニメでありながら正統派ミステリアニメだった。アニメという媒体の制限上非常に難しいはずのフェアなミステリーを見事成立させていて,序盤で型をカッチリ作りリズム良く進めることで自然にミスリードを作るなどなどストーリーテリングの上手さが今年一番光っていた。ただただ力が無い映像と奇跡的に常に顔面が可愛いヒロインズを両立させている時点でかなり要求が高い気がするのだが,加えて斬新な構図やそれとない叙情的なメタファーを多用して芸術作品に昇華させているのがすごい。……で,ありながらやはり根本はハーレムラノベクソアニメであって,"""変態"""達の生き様であるというメッセージ性の強さも堪らない。

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HENSUKI: Would You Even Fall in Love with a Pervert as Long as It's a Cutie? | Netflix

 

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2019年好きだったアニメ十選

  • キラキラハッピー★ひらけここたま

好声が夕方アニメの主人公をやっているというだけでエモかった。ここたまたちも不快すぎず,力を合わせて課題を解決しようという方向性は清々しかった。惜しむらくは打ち切りで中途半端に終わってしまったところだろうか。

本田透という人物に尽きる。常に前向きで,明るくて,真っ直ぐな彼女と周囲との心の交流が描かれる中で,彼女にとって周囲の人間が良い人であるのと同じように,彼女自身も周囲の人間にとって良い人であるという関係性が良すぎた。少女漫画らしい陰湿な話や極端に悲痛な話もあったが,全て本田透が浄化してくれるという安心感が却って視聴時の気持ちよさにつながっていた。早く続きが見たい。

この手のいわゆる少年漫画ラブコメ然とした話は正直ターゲット年齢層から外れてしまったように感じていたが,面白い作品であれば全然楽しめるわと思わされたくらいには上手く出来た作品だった。魅力的なキャラ群と軽妙なギャグはさることながら,あくまでメイン二人のもどかしい距離感・関係性を軸に据え続けたのが非常に良かった。最終回とかまさにね。特殊EDなどを見ればわかるように映像も最後まで非常に高品質で,可愛いヒロインを眺めているだけでも十分見られると思う。

魅力的なヒロインズ、ジャンプラブコメ恒例のサービスシーンの完成度もさることながら,それをきわめて自然に,高品質に仕上げてくる脚本と映像が光っていた。2クール見た人は共感してくれると思うが,「いつもの」サービスシーンに持っていくための「いつもの」導入の自然さ・安心感はこのアニメならではのもの。ともすればしょうもなwになってしまいかねないギャグ寄りな話を上手くラブコメに留めているのはただただ上手い。

  • 世話やきキツネの仙狐さん

おしまい社会人向けと言いつつ,このアニメが週の半ばに放送されていたことが僕にとってのこのクールの清涼剤となっていた事実は否定できない。それほどまでにはにへらにへらと表情筋を弛緩させながら見られるアニメだった。声優陣もとても安心感のある布陣で,OPEDも好き。非の打ち所がないな…

  • 一人ぼっちの〇〇生活

とにかく優しい物語だった。少しずつ変化していく一里ぼっちを眼差す友人たちの優しい目線がもう良かったし,そんな不器用な彼女たちの不器用な人間関係を更に外側から見守っているような感覚が本当に良かった。ただの日常アニメという枠には収まらない,本当の温かさみたいなものに溢れたアニメで大好きだった。

  • うちの娘の為ならば、俺はもしかして魔王も倒せるかもしれない。

ラティナが癒やしだった。こんなに真っ直ぐで健気で,何をしても周りから温かい目で見られるキャラもなかなか昨今居ない。ラティナを見守る大人としての目線で楽しみつつ,ラティナ自身にも羨ましさを感じる,そういう限界な楽しみ方ですら許容してくれる底なしの温かさがこのアニメにはあった。

  • まちカドまぞく

家族や友人から温かく見守られて生きるシャミ子と,シャミ子に触れ合う中で変化していく千代田桃との関係性というだけで無限に泣きながら見られる。対照的な二人でも,お互い足りない部分を補い合って一緒に町を守っていこうと。そういう覚悟を込めた眷属の誘いを桃に申し出るまでになるシャミ子の変化もまた良く。この手のアニメで久しぶりにとても温かい気持ちになった作品だった。

異世界で現代の知識を活かしてものづくり,というタイプの作品だが,主人公と周囲の人との心の交流にも重きをおいていて,ものづくりの楽しみだけで終わらない,突然放り込まれた環境をどう楽しんで生きるか,みたいなもっと大きいテーマへのある種の答えになっているような気がして良い。絶望したら死ぬ*3奇病によるタイムリミットや,長期朝アニメのようなコミカルな進め方が話をテンポ良く推し進めていて,真剣なシーンでも重くなりすぎず気軽に楽しめるのもとても好き。

 ボードゲーム紹介というだけでなくて,ボードゲームを通して少女たちが関係性を築き,成長していくという使い方がすごく良かった。全体的に暗くなりすぎないように作っていて見やすかったし,キャラクターも魅力的で目に優しい作品だった。

 

ショートアニメ五選

  • ぷそ煮コミ

ネトゲの告知アニメにしてはめちゃくちゃ出来の良いショートアニメだった。ネトゲあるあるにとどまらず,リアルワールドでの交流やそこから始まる人間関係なんかも描いていて,プレイしたことがない僕にもPSO2というゲームの実際の雰囲気や魅力がよく伝わってくるものだった。特にみたらし(CV.田辺留依)がハマりすぎていて良かった。癒し。

  • なんでここに先生が!?

マガジンお色気15分アニメ枠。手を替え品を替えサービスシーンを打ってくるので毎週飽きずに見られた。成年漫画みたいなヒロインN人のオムニバスなのもテンポが良く,最終話でカップルが全員集合するのも成年漫画の文法で笑顔だった

  • 八十亀ちゃんかんさつにっき

戸松遥のこういうキャラ最高。名古屋あるあるも結構面白く,この手のご当地あるあるアニメの中ではかなりうまくやっていた。5分ギャグアニメとしても非常によく出来ていた。

575の川柳を通してしか喋らないヒロイン(CV.花澤香菜)とヤンキー上がりの主人公との交流を描くという頭大丈夫か?って感じの設定から想像できないくらい真っ当に良いアニメ。こんなヘンな設定なのにヒロインがしっかり可愛いのがすごい。

  • ソウナンですか?

マガジンお色気枠かと思いきや,サバイバルうんちく×美少女動物園かと思いきや,真っ当な成長物語だった。中盤に差し掛かって,今までサバイバル強者に任せきりだったキャラクターたちが自分も役に立とうとそれぞれに頑張り始めるあたりのエモさ。生死という生き物の根源的な概念に真摯に向き合っていたのも好印象。 

 

好きな映画五選

『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』感想メモ - タト部記憶

『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』感想 - タト部記憶

  • 空の青さを知る人よ

「空の青さを知る人よ」感想メモ - タト部記憶

TVアニメの延長とは思えないくらい完成度の高いアニメーションだった。ラノベ一巻分くらいの筋と言ってしまえばそれまでなのだが,2時間位の映画で一通りの要素が詰まっていて満足感があった。

コードギアス 復活のルルーシュのたとのネタバレレビュー・ 内容・結末 | Filmarks映画

 

番外:好きなキャラクター五選

暗い過去やトラウマを抱えて苦悩する天才が好きすぎる。琴一筋だったからこその恋を知っていく描写も良い。超美人,だからこその表情の変化もずるい。種崎敦美さんの声の載せ方も良い。

どこまでも真っ直ぐで明るくて清い性格と他人を無条件に愛せる聖人めいた言動に,毎回本田透!!!!!という感情になってしまった。彼女だからこそ一癖も二癖もある登場人物たちを照らせるのだろうし,彼女自身も登場人物たちとの心の交流の中で変わっていく良さ。石見舞菜香さんの性格が良さそうな声質がバッチリハマっていた。

  • メリ(CV.悠木碧,『ラディアン』)

普段は明るく品行方正,ときどき粗暴で過激という典型的な二重人格キャラだが,仲間思いで真っ直ぐという性格は変わらず。だからこその,セトの裏切りが許せず見せた素っ気ない態度。ここまでキャラの感情に振れ幅があるキャラクターもなかなかないし,それが一貫した感情のもと動いているのも良い。

善意の塊で好き。デイルよりもラティナに移入して見られるくらい好き。汚い大人の社会や論理に染まらず、まっすぐに考え、まっすぐに感じ、まっすぐに表現する子供らしさは最近のアニメには得難いものだし、大切にしていきたいキャラクターだった。

ズルくて,臆病で,感情女すぎて大好きすぎたので劇場アニメーションだけどここに挙げる。他人に嫌われたくないという一心で病的なまでに繕える臆病さがもう好きだし,でも本当の自分を知ってほしいという激しい感情も良いし,何よりいたずらっぽい(ドスケベ)喋り方が好き。宮本侑芽さんは神。

 

番外:スタッフ三選

  • いまざきいつき(監督)

『可愛ければ変態でも好きになってくれますか?』での前衛的で芸術作品然としたコンテ,音響と,何より作品のテーマを汲んで視聴者に伝えようとする真摯な姿勢,迸る情熱に。

ぼくたちは勉強ができない』『あひるの空』『神田川JET GIRLS』シリーズ構成,『ケンガンアシュラ』脚本。いずれも原作付きアニメではあったが,改めて氏の「ハマった」ときの構成の安心感や会話劇の軽妙さに酔えた1年だった。

 僕が見た範囲だけでも,『ラディアン』メリ,『からくりサーカス』コロンビーヌ,『戦姫絶唱シンフォギアXV』立花響,『ピアノの森』丸山誉子,『グランベルム』袴田水晶,『炎炎ノ消防隊』環古達,『逆転裁判綾里真宵,と多彩なキャラで(しかもどれもめっちゃ良いキャラ),めちゃくちゃノッた演技をしていて最高だった。いやわざわざ今年挙げなくてもという気もするが,あえて今年。

*1:年内公開分は一期TV未放送話と二期

*2:せっかく良いアニメなのにFOD独占なのか……ほんとそういうとこやぞ

*3:葵・トーリかなってなる